好きなんかじゃない
「屋上だ」

 秋の朝の涼しい風が吹いている。

「蔵本、何を分かり切ったこと言ってるんだ」

 藤田が呆れたように言った。だって、遊びに行くって言ったから、てっきり……

「校外に出るのかと思っちゃったんだよ。私もそう思ってたもん」

 槇原さんがそう言った。

「まさか! 制服着てるんだから校外なんか出たら捕まるだろ?」

 それはそうだけど……

「藤田はそういう事気にしないかと思った」

「俺だって先生からのペナルティを無駄に増やしたいわけじゃない」

その割には先生の手伝いしてるとき楽しそうだけどなあ。

「先生といえば……」

 槇原さんが思い出したように言う。

「私たちがいない事を心配して、家に電話かけたりしてないかな?」

  屋上の床にカバンを投げ出して寝転がりながら藤田が手をひらひらさせた。

「へーきへーき。諸口センセ、今日は二時間目まで授業だから電話する暇なんてないって。それまでに戻れば大丈夫でしょ。それまでここで日向ぼっこでもしてよ」

「のんきだなあ」

 ポロっと私が言った一言に藤田が”わかってないなあ”とでも言いたげな顔で

「悪事には下準備が大事なんだよ。あと、貯水槽に上るなよ。危ないからな」

と言う。うるさいなあ、わかってるよ。別にアレだって趣味で登ったわけじゃないし。

「返事」

 藤田が先生のようなことを言い出した。

「……上るのは別に趣味じゃない」

「危ない事すんなって言ってんの。次は無事じゃ済まないかもしれないだろ?」

「わかったよ。のぼらないって」

「あと、屋上のヘリにも近づくなよ。落ちたら死ぬから」

「行かないよ!」

「ならよろしい」

 そういうと藤田は自分の鞄を頭の下に置いて枕代わりにすると目を閉じてしまった。
 え?寝たの?

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