好きなんかじゃない
校門からそっと覗く。
忘れて帰ってますように。

「やっと来たんだ。約束忘れたかと思っちゃった」

藤田は意外に近くにいた。
ばっちり目が合った。

「あ、き来ました」

精一杯それだけ言った。
藤田はにっこりわらって

「よしよし、じゃあ行こうか」

と言うと、ポケットに手を突っ込んだまま歩き出した。
さっきまでつないでた手だ。
あたたかさを思い出して、恥ずかしくなる。

私は藤田の後ろについて歩き出す。
藤田は顔に?を浮かべると

「どうしたの?横歩きなよ?」

と私に歩調を合わせて隣を歩いてくれる。
意外に優しいところもあるんだなぁ
茶髪に染めた髪をみながら思った。

「そーいえばさぁ、名前、なんていうの?」

私に聞いた。
え、あの、同じクラスなんだけど…
名前、憶えられてなかったんだ。
私、影薄いのかな?

「えと、蔵本、です。一年」

「そっかー、同じ同じ!」

藤田は嬉しそうに跳ねる。

「じゃあ、蔵本、よろしく」

握手を求められる。
目の前に手がさしだされる。

「よ、よろしく、お願い、します」

握手して、会話して、二つは同時にこなせない。
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