好きなんかじゃない
ヘンに思ってないかな。
藤田を見ると、にこにこしながら私の手を握っている。
よかった。
気にしてないみたい。

道中、藤田はひとりでしゃべっている。

「あそこの、アイスはね。不思議な味がたくさんあるんだよ。
 夏にオープンしたばっかりでね……」

アイス、好きなんだね。
私は、言葉にできなくて心の中で相槌を打つ。

「っと」

藤田が急にストップした。
そして、指をさす。

「ここ!」

うわぁ。かわいいお店。
赤い屋根に白い壁。
アイス、というよりはジェラートのお店のようだった。

「結構、混んでるねぇ」

藤田が店の中を覗き込みつつ言う。

「そ、そうだね」

「テイクアウトしてから、公園で食べよっか?いい?」

藤田が私に尋ねる。

「い、いいです。」

というより、何でもいいです。
おしゃれな店だし、なんか私の知らない決まりとか、ないよね?

「別にそんなに固くならなくていーのにさ。」

藤田が言う。
だって、こんなおしゃれな店、来たことないんだもん。
藤田は、店のドアを開ける。
カランとドアベルの澄んだ音がした。
私は怖気づいて、ドアの前で立ち止まってしまう。

「くらもとー!期間限定がラズベリーって!」

藤田が私を呼ぶ。
なんか、恥ずかしい。
注文カウンターに行くと、藤田がいろいろ、言い出した。

「蔵本、トッピング2つまでね。
 俺はー、チョコにマシュマロとクッキートッピングで!」

藤田は恐ろしいスピードで注文してゆく。
私はメニューを見ながら迷っていた。

「え……と、私は……」

見かねたのか、藤田が

「蔵本、ベリーとナッツどっちが好き?」

「えと、ベリー?」

「じゃー、おねーさん。
 この子の注文はラズベリーにチョコスプレーとベリー追加で!
 あと、二人ともコーンのM」

と普通に私の分も注文してくれた。

「俺、会計済ませちゃうから、先に受け取りカウンターで受け取ってもらってもいい?」

私は、受け取りカウンターに行く。
恥ずかしい。
藤田に気を遣わせた。
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