わかばの恋 〜First of May〜
★彡 哀しい現実
あたしは胸に輝くクロスのネックレスを指で触った。
将吾さまから今年の誕生日プレゼントにもらったもので、空色のケースのお店のものだ。
あたしが持っている唯一のブランド品だ。
あたしを包み込むように優しく見つめる、あのカフェ・オ・レ色の瞳を心に浮かべる。
幼い頃から、二人の子どもを抱えて必死に生きる母や、そんな母を早く楽にさせたくていっそう勉学に励む兄には、どんなに寂しく辛いときでも甘えることはできなかった。
なにもできない「お荷物」な自分が、すっごく不甲斐なくてイヤだった。
自分さえいなければ、二人とももっと楽になれるのに、と思わずにはいられなかった。
でも……将吾さまのあの瞳が「そうじゃない」ことを教えてくれた。
お屋敷にいてもいい、ということをだれよりも教えてくれていた。