わかばの恋 〜First of May〜
「じゃあ、そうまでして将吾さまを真似したかったのに、どうしてやめたの?」
すると、翔くんはまた気まずそうな顔になった。
「……おまえの大好きな将吾さんは、結婚して完全に手の届かないところへ行っちまったことだし、これからはちゃんと『素の自分』で勝負しようと思ったんだよ」
なんだか、急に不穏な空気になってきた。
翔くんの目があたしをまっすぐ射抜いてくる。
その漆黒の瞳には、狙った獲物を決して逃さない獰猛なまでの「男」が潜んでいた。
……将吾さんが彼女を見つめていた目に、すごく似ていた。
あたしはどうしても見返せなくて、欄干の外に目を逸らした。