星のキミ、花のぼく
お友達………すっと出てきた言葉だけど、自分でもなんか笑ってしまう響き。
そこにあるべき信頼関係は、私たちにはない。これから信じてもらう、信じさせてもらう。
「友達は、互いのためになるように行動するものでしょう。私はあなたのために、あなたは私のために、具体的に何をすることになるか、整理しましょう。」
「契約内容の整理ってことか。そうだな、まず俺がお前に与えるもの、俺がお前を信じることができたときには、お前が望むこと何でも1つ叶えてやること。これに匹敵する要求なんだから、俺がトイレットペーパーがないって言ったら、買って飛んで来るくらいはしてくれてもいいよな。」
「それはつまり、あなたのパシリになれって言いたいの?」
はぁ~と悠星は大きなため息をはいた。
「お前はどうってことないように思うかもしれないけど、俺がドラッグストアでトイレットペーパーを買うなんて一大事なんだぞ。写真なんか撮られたら、生活感溢れる俺の姿を見たファンのイメージを傷つけかねない。やましいことはなくても、動ける自由が少ないんだよ。」
わかってないなとでも言うように困った顔をする。その表情が嘘だとは思えなかった。
私が思っている以上に、普通に生活するだけでも気をつかって動く必要があって、気を抜くことはできないのだろう。
「わかったわ。買い物の代行くらいはしてあげる。」
「いやいや、俺の商売道具である体を傷つけるような危険にさらすわけにはいかないだろ。掃除とか洗濯とかそういった類いの家事もやってくれていい。」
「それは、いくらなんでも過剰に要求しすぎでしょう!」
信じてもらうために、この男の役に立つことをするとはいえ、こんなに要求されては私にとって何も良いことがない。
叶えるという望みだって、漠然としすぎてて、そのときになって叶えてやれないなんて言い出すかもしれない。この男ならあり得る。
「望みを叶えてくれるのだって、あなたが私を信じられたらの話で、契約完了したときの話でしょう。それまで私を縛っている間、私の得がなさすぎると思わない?」
「そうか、妥当だと思ったけどな。対価の望み1つじゃ足りないなら……そうだ、バイト代を支払おう。お手伝いさんとして、マネージャーから時給1000円で払わせる。これなら条件悪くないだろ?」