星のキミ、花のぼく
好きなように私を使う代わり、きちんとバイト代は出すと言う。
3か月だけとはいえ、いつ呼びつけられるかもわからなくて、私の自由な時間にこの男が侵入してくることになる。
バイト代がもらえるものならもらいたいのが本音。
もらうからにはそれなりにきちんと役割を全うしよう。
「わかった。バイト代をくれるなら、お手伝いとして、あなたの役に立ちましょう。精一杯あなたに尽くす。家政婦さんじゃないから、私のできる家事レベルは高くないけど、それに関係なく時給はもらうからね。」
「了承しよう。マネージャーに伝える。逆にお前からは何かあるか?マネージャーにきちんとこの経緯を説明する以外に何を望む?」
もともと私は、この手の業界の人たちと関わりたくないと思っているんだ。
こちらからわざわざ関わりを持つようなことはしたくない。
3か月の間だけ、この男のために尽くすこと以外は、普通の生活を送りたい。
「私の要求は、きれいさっぱりこの出来事すべてを忘れてくれることよ。契約完了したらそれをあなたに望むわ。バイト代も出してくれるっていうんだから、これ以上にこちらから望むことはないわ。」
「そんなに関わりたくないと言われるのも心外だが、いいだろう。これで契約成立としていいか?あとから付け足しはなしだぞ。」
「わかってるわ。あなたにしっかり尽くす。あなたに信じてもらえるように、あなたのためになるわ。」
数秒の間、お互いの真意を確かめるように見つめる間があった。
その間のあとで、ふっと笑みをこぼし、私を試すようにこの男は微笑んだ。
「じゃあ3か月、俺のことを信じさせてくれよ。改めて、俺は佐藤悠星(さとうゆうせい)。24歳。職業アイドル。よろしく。」
「私は、園田千花(そのだちはな)。M大学法学部4年。来年からは金融機関で働く予定。私の平穏な将来のために、3か月間、全力であなたに尽くす。」
宣戦布告のような自己紹介をして、私たちの普通じゃないお友達の関係がはじまった。