氷点下できみを焦がしたい
「ん……うわ、びっくりした」
見とれてしまって、どれくらい時間が経ったのかわからない。
数十秒かもしれないし、数分かもしれない。
永遠くんのながいまつ毛が動いて、ゆっくりと瞼が上がる。
茶色くて綺麗な瞳が、私の姿を捉えた。
「あ……おはよう」
どうしていいかわからなくて、咄嗟にへらりと笑ってしまった。
「ずっと見てたの?怖いんだけど」
「……ごめん、たしかに怖いよね」
寝顔を見つめてたなんて怖いよね。
いくら綺麗で見とれてしまったからって……。
「はぁ?本当にずっと見てたのかよ」
冗談だったのに、と呆れたみたいに笑う永遠くんは、思ったより引いてないらしい。
よかった……。
というか、人に見られることには慣れてるのかもしれない。
「そうだ、ねえあのノート……私のために作ってくれた?」
私がそう聞いたら、永遠くんはまだ眠そうに体を伸ばしながら、私をちらりと一瞥する。
「……自惚れんな」
私を見る表情が、優しくて。
違うって言わない永遠くんが、なんだか可愛くて。
「素直じゃないなぁ」
くすくすと笑う私の髪を、永遠くんの手ががくしゃりと乱す。
「うるせー、絶対追試になるんじゃねえぞ」
永遠くんは、照れたときすぐ「うるせー」って言う。
本当におかしくて笑うとき、目が細くなる。
そういう、好きになって知ってしまったことが多ければ多いほど、きみに溺れていってしまうなぁ。