氷点下できみを焦がしたい
永遠くんに連れられて、職員室の近くの自習室にやってきた。
自習室なんてあったんだ……使ったことないから知らなかったなぁ。
私たちの他に誰もいないみたいだ。
テストも終わったばかりだから、人気がない。
「教科書とノート出せ」
どかっと椅子に座った永遠くんは、冷めた目で私を睨む。
……この人のオンオフの切り替え、すごすぎない?
私がやったらどこかでボロが出てしまいそうだ。
少しだけ尊敬しながら、慌てて教科書とノートとペンケースを机に出して、ページを開く。
「とりあえずこの問題解いてみろ」
「は、はい!」
えーと、これはきっと何かの公式を使うから……。
ど、どの公式かな……なんでこんなにたくさん公式があるの?
教科書を見つめながら、固まってしまう。
「……」
「……」
「手止まってるぞ」
「ま、待ってください……」
どうしよう怒られる!怖い!
『こんなのも出来ねえのかよ馬鹿じゃねえのクズが』
って言われる!でも焦るともっと分かんない……!
「ここは、この公式使うんだよ」
「え……」
「こことここの長さがわかってるだろ。
その時はこの公式。逆にここが分からない時はこっちの式」
「……あ、そっか。なるほど」
じゃあこれを式に当てはめて……。
言われた通りに当てはめて、ノートに式を書き込んでいく。
「こう……?」
「ん、合ってる」
顔をあげたら目が合って、ドキッと心臓が鳴った。
いつもの王子様スマイルとは違う。
だけど冷たいわけじゃない。
もしかしたらこれが本当の永遠くんなのかもしれない。
そう思わせる自然な笑顔に、キュンとしてしまう。
胸の奥がぎゅうっと、掴まれたみたいに苦しくなって、頭が熱くなる。