氷点下できみを焦がしたい
分からないって言っても、怒られなかった。
分からなくても馬鹿にされなかった。
合ってるって、優しい顔で笑ってくれた。
『ん、合ってる』
って言った時の優しい表情は、私が今まで見ていた永遠くんとも違って。
だけど冷酷な王子様とも違って。
これが本当の永遠くんの笑顔だって気がした。
「なに驚いてんだよ」
「いや、出来なさすぎて怒られると、思ったから」
「別に出来ないことには怒らねえよ」
「……そっか」
なんだか心がぽかぽかしてくる。
こんなに冷たい、氷点下の彼のひと言で。
「……ていうか、誰にも言わなかったんだ?」
「え?」
「俺の性格のこと」
「ああ……だって、本当に言ったって誰も信じてくれないと思うし……」
私が『佐藤永遠くんは猫被ってるだけで本当は冷たくて毒舌な人なんだよ!』なんて、誰も本気にしてくれない。
「ふーん、よく分かってるじゃん」
右の口角を綺麗に上げて、満足げな笑顔を見せる永遠くん。
……だめだよ、ドキドキしちゃだめ。
そう思ってる私はすでに永遠くんにドキドキしてるわけなんだけど、小さく首を振ってそんな自分を追い出した。