氷点下できみを焦がしたい
「はい」中から聞き覚えのある声が聞こえて、ガチャリとドアが開く。
人形みたいに綺麗な笑顔が私をとらえた瞬間に崩れて、面倒くさそうに眉が寄る。
そっちの表情の方が永遠くんらしく見えて来てしまった。
慣れって怖い。
「永遠くん、追試合格したよ!」
手に持っていた98点のテストをにこにこしながら永遠くんに見せる。
だんだん冷たい視線に睨まれるのにも慣れてきた。
「当たり前だろ。誰が教えてやったと思ってんだ」
「永遠さまです!」
「……やめろよ気持ち悪い」
よりいっそうしかめられた顔。
不機嫌な顔すら綺麗だなんて、人生は不公平だ。
「つーか何だよ98って。どこミスってんだよ」
「え……」
「はぁ?計算ミスじゃねえか。しっかり見直せよアホ」
「ご、ごめんなさい……」
98点で怒られるなんて……。
でも、1週間勉強を教えてもらって少しだけ分かった。
永遠くんは、出来ないことには怒らなかった。
何度でもちゃんと教えてくれた。
出来るのに間違えた時にしか怒らない。
それはなんだか、彼の本当の優しさな気がした。