氷点下できみを焦がしたい







「お疲れ」



無心で数字を表に入力していると、コトン、と机に缶のココアが置かれた。

その音に驚いて顔を上げると、いつもより少し優しい顔の永遠くんが私を見ている。
気付けばもう1時間半くらい経っていた。



「助かったよ。ありがとな。
俺らも今日はもう帰るからお前も帰っていいよ」

「あ、ありがとう、ココア……」


こんな優しいことをサラッとされたら好きになっちゃうかもしれないよ!いいの!?なんて心の中で少しだけ思いながらも、もらったココアを握りしめる。

王子がくれた、アイスココア。
少し前の私には信じられないだろう。

王子と喋ったこともなかったのに、こうして放課後一緒に過ごして、ココアまで貰えるなんて。

……まあ、王子がこんな性格だなんてことも想像してなかったけどね。



生徒会室の鍵を職員室に返してから、3人で並んで下駄箱で靴を履き替える。

私も一緒に帰っていいんだ、と思うとなんだかドキドキしてしまう。



「羽瑠ちゃんって電車通学?」

「うん!」

「そっか、じゃあ駅まで一緒に行こう。永遠は歩きだよな?」

「そう」

「じゃあ途中からは羽瑠ちゃんと2人きりだね」


にこ、と笑う真緒くんは、やっぱりチャラそうだ。

……永遠くん、徒歩通学なんだ。
家、この辺にあるのかなぁ。

どんな家に住んでるんだろう……って、そんなことどうでもいいでしょ!



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