氷点下できみを焦がしたい



「笹木?」

「え……永遠くん!?」


しばらく公園で途方に暮れていると、突然呼ばれた名前に驚いて顔をあげれば、そこには。

傘をさして、公園の前の道路を歩いていた永遠くんが私に気付いて声をかけてくれたみたいだ。

そっか、永遠くんもここまで一緒の帰り道だもんね。



「傘忘れたのかよ」

「う、うん……」



髪も濡れてるし、せっかく巻いた前髪は崩れたし、そもそもワイシャツが透けてるし。

こんな姿を永遠くんには見られたくなくて、思わず下を向く。
帰るなら早く通り過ぎてほしい……ていうか、気付かないでほしかった!



「ほら、入れよ」



ゆっくり近づいてきた永遠くんの足音に顔を上げると、差し出されていた黒くて大きめな傘。

傘に当たって弾ける雨の音が、私の心臓の音と重なる。


「え……」

「しばらく止まないだろ、この雨」

「入れてくれるの……?」

「そうだって言ってんだろ。早くしろ」



行動は優しいのに言葉が怖い……と思いつつも、素直に甘えることにした。



「あとこれも着ろ」


ぶっきらぼうに差し出された、永遠くんの紺色のカーディガン。
透けてるの、ばれてた……。


「カーディガン、濡れちゃうかもよ」

「いいよ、そのくらい」


なんだか優しい。
言葉は冷たいけれど、外面だけの王子様のときよりもずっと温かい気がした。



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