氷点下できみを焦がしたい
「あっ……でもこんなに濡れてたらどっちにしろ電車に乗れないから、ここで雨宿りしながら乾かしてから行こうかな。だから先に帰ってていいよ」
「……バカじゃねえの。風邪ひくぞ」
「でも、」
「……うちで乾燥機かけていけば」
「え!?」
予想外の言葉に、思わず大きな声が出てしまった。
「今親いないし、シャワーくらい貸してやるよ」
「で、でも……」
待って!そんな展開になるなんて思ってなかった。
そんなのドキドキして死んじゃいそうだし、だめだよ。
……好きになっちゃったら、どうしてくれるんだ。
さっきから痛いくらいにキュンキュンしている心臓。
これ以上キュンとしたら、きっと後戻りできない。
「いいから行くぞ。男の家に入るのが嫌なら俺は家の外で待ってるから」
「そういうわけじゃないけど……。
な、なんでそこまでしてくれるの?」
「俺は優しくはないけどそこまで心が無いわけじゃねえよ」
怪訝そうな顔。
そっか。そんな、当たり前みたいに助けてくれるんだ……。
「……じゃあ、お邪魔したいです」
ああもう、だめだよ、羽瑠。
だめだって。
好きになっちゃだめだって、努力するって。
ついこの前、真緒くんと約束したじゃない。