氷点下できみを焦がしたい

彼を好きになったきっかけは、2年前の入学式の日。 


知り合いが1人もいない高校の入学式ということで、緊張してお腹が痛くなってしまった私に「大丈夫?」と声をかけてくれた彼のことが、大好きになってしまったのだ。


下駄箱でうずくまっていた私にかけてくれた優しい声に。
思わずホッとするような、柔らかい笑顔に。


胸がきゅんと温かくなって、お腹の痛みもどこかに行ってしまった。



……たったそれだけのこと、きっと彼は覚えていないだろうけれど。




そんな入学式で一目惚れした彼が「王子様」と呼ばれる人気者だと知るのに時間はかからなかった。

新入生代表の挨拶で壇上に上がった永遠くんを見て、彼が首席入学するくらい頭がいいことを知った。



周りの女の子たちが

「あれが西中の王子!?」
「初めて本物見た!すごい格好いい!」

なんてキャーキャー騒いでいるのを聞いた。

中学の時から有名なくらい、格好良くて素敵な王子様だったらしい。




だけど遠くから見つめるだけで、告白なんてとてもできない。だって私と彼は住む世界が違うから。

だからただ憧れているだけで、彼が他の人たちに優しくするのを見ているだけで、それで十分なんだ。


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