氷点下できみを焦がしたい
「飲む?ホットミルク」
「え、いいの?」
「乾燥機終わるまで暇だろ」
「あ、ありがとう……」
ダイニングキッチンに立っていた永遠くんが、温めたばかりのホットミルクをマグカップに入れてくれた。
黒くてシンプルなマグカップが永遠くんらしい。
ホットミルクまで作ってくれるなんて、どうしたんだろう。
冷酷な、氷点下な、冷たい永遠くんなはずなのに。
この永遠くんは、この優しさは、本物の永遠くん……?
「永遠、くん」
マグカップを受け取った時に微かに手が触れて、それだけで胸の奥がジンと熱くなって。
……だめだなぁ。
このままじゃ、好きになってしまう。
だってずるいよ。
あんなに冷たいくせに、こんなに優しくするなんて。
私だけが、本当の永遠くんを知ってるなんて。
そんなの、王子様に憧れていたあの時よりもずっと、本気になってしまう。
「なに」
テーブルを挟んで向かい側のソファーに座って同じようにマグカップを持っている永遠くんが、ぶっきらぼうに返事をする。
「──大切な人が、いるの?」
その言葉に、永遠くんは一瞬、驚いたように目を見張った。
それからすぐにいつものポーカーフェイスに戻る。
「……なに、真緒から聞いたの?」
「うん、」
しばらくの沈黙。
私はなにも言えなくてただ永遠くんを見つめていた。
永遠くんは、黙って斜め向こうを見ていた。