氷点下できみを焦がしたい
……と、思っていたのに。
ある日私は、驚くべき光景を見てしまった。
それは放課後、掃除当番で掃除をするために、使われていない資料室に向かっていた時。
「なんで私じゃダメなの……!?
いつもいつも優しくしてくれたのは嘘だったの?
お願い永遠くん、私だけの王子様になってよ!」
掃除をしに入ろうとしていた資料室の中からそんな声が聞こえて、驚いてドアにかけた手を止める。
え、永遠くん……って言った……?
もしかしてこの中で、王子が告白されてる!?
どうしよう、これじゃあ盗み聞きしてることになっちゃう……。
早くここから離れないと。
そう思うけれど、何だか修羅場みたいな空気に、どうすることもできずに固まってしまう。
「……ごめんね、そういうつもりじゃなかったんだ。
でも気持ちはすごく嬉しいよ」
と、中から聞こえてきたのは申し訳なさそうな、優しい声。
王子の憂いのある表情が想像できて、私まで悲しい気持ちになってしまう。
「永遠くん……」
「僕にきみはもったいないよ。
もっと素敵な人と幸せになって」
「永遠くん……わかった、聞いてくれてありがとう」
人が出てくる気配を感じて、私は慌てて柱の陰に隠れる。
泣きながら走り去っていた女の子には、私のことは見えていないみたいだった。
緊張と複雑な気持ちで、心臓がドキドキしている。