氷点下できみを焦がしたい
「文化祭、一緒にまわらない……?」
と、少し驚いたように顔を上げる永遠くん。
なんだか途端に恥ずかしくなって、私の気持ちぜんぶ見透かされたみたいな感じがして。
「……あ、りんご飴!一緒に食べたいなあ、なんて」
ちょっと無理のある言い訳を付け加えて、へらりと笑う。我ながら誤魔化し方が下手。
「あー……無理」
永遠くんはそう言うと、決まり悪そうにまたプリントに目を落とす。
「……そっ、か」
「文化祭は会わなきゃいけない奴がいるから」
「それって、」
例の、大切な人?そう続けようとしたけれど、返事はわかり切っていたからそのまま口を閉じる。
……そっか、そうだよね。
なんだろう、なんでこんなにショックを受けてるんだろう。
……永遠くんとりんご飴、食べたかったなぁ。
「お待たせ〜!」
なんだか少し気まずい空気を破るように、能天気な声が響く。
ガラッと開いたドア。
なにも知らない真緒くんが入ってきてくれて、少し助かった。