身代わり婚~偽装お見合いなのに御曹司に盲愛されています~
あの日なぜかお見合い続行となってしまい、初めて二人で会うことになったその日はとても寒かった。

雪が降りそうな空を見上げて、私はポケットに入れていた手を出すと口元で息を吐いた。
真っ白な息がピンと張りつめた空気に溶け込んでいく。

落ち着かない気持ちをなんとか無理やり抑え込もうと、道行く人を見ることでごまかしていた。

どうしてこんなことに?

私は頭の中に、両親たちと考えたシナリオをもう一度確認する。
先方から断られることが前提だった私たちとしては、紹介者の人や立場上こちらから断りをいれるとことはできなかった。

だから、今日で断られるように仕向ける。
それが私の役割だった。

お姉ちゃんの評判も落とさずに、相手がこの女とは無理だと思わせるなんてできる?

そんなことを心の中で呟いていた。

「待たせた?」

自分の世界に入っていた私は、後ろから突如聞こえた低い声にびくりと肩がゆれ、心臓がバクバクと音を立てる。
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