身代わり婚~偽装お見合いなのに御曹司に盲愛されています~
悠人さんが何か言いかけたところで、悠人さんのスマホが音を立てる。

「なんだよ……」
珍しくぼやきながらスマホを手にした悠人さんの表情が、すぐさま険しく変わる。
「ちょっと出てくる」
それだけ言うと、スマホを手にして悠人さんは自分の部屋へと入っていった。

「安心させてよ……」
小さく呟く私の声は、悠人さんに届くことはなかった。

次に部屋を出てきた悠人さんは、きちっとしたスーツ姿で、私は作りかけていた料理の手を止めた。
「礼華、悪い」
その言葉だけで、悠人さんの状況が解り私は笑顔を張り付ける。

「大丈夫。いってらっしゃい」
ひらひらと手を振ると、悠人さんは少し悲し気な表情を浮かべて私のもとへとやって来る。
「ごめん」
そう言って私をそっと抱きしめる。
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