身代わり婚~偽装お見合いなのに御曹司に盲愛されています~
第六章 心映え これが真実ですか?
どんな展開になるかなど全く分からなかったが、どうやら逃げる方法もなさそうだった。

少し化粧と髪を直して、バックを手にマンションを出た。
指定されたのは、会社近くのカフェだった。
何を言われるのかわからず、私はごくりと唾液を飲み込む。

ゆっくりと店内へ入ると、窓際の席にひときわ目立つその人をすぐに見つけることが出来た。
コツコツと自分の靴の音がやたら大きく響く。
言葉なく私が更科さんに近づくと、あの真っ黒の瞳が私を見上げた。

「休日に呼び出してごめんさいね」
綺麗に口紅の塗られた唇が弧を描く。それだけでなぜか負けたような気がしてしまう。

「いえ」
なんとかそれだけを発した私に、更科さんは綺麗な所作で自分の前の席に座るように促す。
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