身代わり婚~偽装お見合いなのに御曹司に盲愛されています~
それだけがありがたかった。それでも傘もささず街をさまよう私を、通りすがりの人がチラチラと見て行くのが分かった。
しかし、そんなことはどうでもよかった。

悠人さんは更科さんと結婚がしたかった。
更科さんが好きだったのだ。私は、更科さんの、そしてお姉ちゃんの代わり。
いや、代わりにすらなっていなかったのかもしれない。

いなくなってしまったお母さん、更科さん、それをただ埋めるだけの存在だったのかもしれない。

社長になるために私と結婚するつもりだったけど、私じゃ結局役不足だったってことか……。

そう納得したところで、私の目の前が真っ暗な闇へと変わった。
ああ、今までがすべて夢で、あのお見合いの前に戻れたらいいのに……。
遠くでたくさんの人の叫び声を聞いた気がしたが、私はもう目を開けることができなかった。




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