身代わり婚~偽装お見合いなのに御曹司に盲愛されています~
第七章 忍ぶ恋ほど君思う 消えた君
「おじいさんどういうことですか?」
俺はせっかくゆっくりとしていた休日に、会長である祖父に呼び出され不機嫌そうな声を上げた。
大村グループ本社の広い会長室。
未だ眼光の衰えない、この老人は俺を睨みつけたまま視線を外さない。
「悠人、話は変わった。お前にとっていい話だぞ」
そう、礼華が彩音ではないと知っていたのは俺だけで、周りの人間は誰も知らなかったし、祖父自体も自分の進めた相手と一緒にいると思っていた。
俺自身も、この問題を先送りにしていたのがいけないが、どこからバレたのか、まあ情報源は予想はつくが、祖父にバレたのはついこの間だ。
「いい話ってなんですか?俺は忙しいんです」
祖父のその言葉に、苛立ちが募る。
強く言い切った俺に、祖父は含みを持たした視線を俺に向けた。
「薫子さんが、結婚してもいいといってきた。それならいいだろ?」
「はあ?」
薫子がなんだというのだ?
「薫子さんと結婚できない腹いせに、どうでもいいその辺の女で仕返しをしようとしたんだろ?」
あまりのせりふに俺は開いた口がふさがらない。
俺がいつ薫子と結婚したいなどと言ったのだろう?