身代わり婚～偽装お見合いなのに御曹司に盲愛されています～
その後、俺は礼華の同期である真鍋さんと専務室にいた。

「事情は分かりました」
礼華の友人であろう真鍋さんは、静かに話を聞き終わると俺を見た。

「相手が専務ということは聞いていませんでしたが、礼華から話は聞いていました。とても悩んでいたから……」
そこまで言うと、真鍋さんは考え込むような表情を見せた。

「頼む、礼華に居場所を聞いてもらえないか？」
懇願するように言った俺に、真鍋さんは小さく首を振る。

「確かに更科さんの話をして、礼華に不安を与えた責任は私にもあります」
礼華が話す前に、俺と薫子のの話をしたことだろうとすぐに分かった。

「じゃあ」

「でも、礼華には考えがあって専務から離れて、休職までして姿を消したんです。私の一存でお教えすることはできません。それに私は礼華の友人であって家族ではありません」
さすが礼華の友達とでも言うのかもしれない、凛とした意思の強い瞳が俺を見ていた。

「こうなった責任は専務にもあるんじゃないですか？」

「え？」
その意味を問うように俺は、間抜けな声を上げた。
「どうしてもっと早く礼華の不安を取り除けなかったんですか？　どれだけ礼華が悩んでいたか……。それに初めから知っていたなんて。礼華が許しても私は許せません。初めからきちんとするべきです」

意味が解らない俺に、真鍋さんは小さくため息を付くと誰かにメッセージを送っているようだった。

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