身代わり婚~偽装お見合いなのに御曹司に盲愛されています~
「私ね、後悔してないんだ」
空は真っ青でいつしか、汗ばむ季節になっていた。
あの寒い日に出会い、雪を見ながら過ごした甘い時間が遠い昔のような気がする。
「礼華……でも、これでいいの?」
お姉ちゃんの言いたいことはもっともだ。
お母さんだってお父さんだって、このままでいいと思っているわけじゃないだろう。
私の気持ちが落ち着くのを待っていてくれている。
「確かにね。知る権利はあるのかもしれない。でも……」
自分に言い聞かせるように言って、そっと自分のまだぺったんこのお腹にそっと触れた。
「でも、悠人さんにとって今大切な時期だし」
ゆっくりと言った私の言葉に、お姉ちゃんはツカツカと歩いてくると、私の目を見据えた。
「でも、でも、こんなの相手の男に責任があるのよ。妊娠させるなんて」
ギュッと唇を噛んでお姉ちゃんは、怒りを抑えるように言葉を発した。
「ありがとう。でもね、責任をとってなんて欲しくないの。妊娠したからしかたないから社長も諦める。そんなことをしてもらうぐらいなら、ここでおじいちゃんやおばあちゃんい可愛がってもらった方がいい。それに悠人さんには社長になって夢をかなえて欲しい」
遠くの船が汽笛を鳴らすのを聞きながら、私は自分に言い聞かせるように言うとお姉ちゃんに笑顔を向けた。
お母さんが出て行ってしまって、それだけを目標に頑張ってきた悠人さんを私は知っている。
あれだけ大切にしてもらい、幸せな時間をもらえたことだけで私は幸せだ。