身代わり婚~偽装お見合いなのに御曹司に盲愛されています~
「社長なんかより礼華の方が大切だ。礼華がいれば何もいらない」
涙がポロポロと零れ落ちる。
そんな私の手をしっかりと悠人さんは握ると、私の手を引いて立ち上がらせる。
流れ落ちる涙を悠人さんの温かい指が拭ったあと、悠人さんは私を見つめた。
そしておもむろポケットから箱を取り出した。
「礼華、なにより君が大切だ。一生俺のそばにいて欲しい。結婚してください」
生まれてくる新しい命と二人で生きて行く覚悟を決めていた。
お姉ちゃんの代わりだと、更科さんの代わりだと思っていた。
そんなことはなかった。
ずっと私を見ていてくれた。
そんな喜びが私の心に広がる。
しかし……。
もう私だけではない。
すぐに返事をしない私に、悠人さんは少し表情を暗くした。
「礼華?」
「私だけじゃいやです」
このことだけはきちんと伝えなければいけない。
私だけじゃなく、この新しい命も大切にしてくれる?
そんな思いも込めて私はジッと悠人さんを見つめた。