身代わり婚~偽装お見合いなのに御曹司に盲愛されています~
小声で言った明日香に、私も同意する。
前の専務は陰でパワハラやモラハラがひどく、明日香も何度も辛い思いをしていたのを知っているだけに、私もホッとして笑顔を向けた。

エレベーターで明日香と別れると、私は更衣室で制服に着替えると自分のフロアへと向かう。

秘書の明日香はいつも自前のスーツだが、私たちは制服がある。一般的なグレーのチェックの制服だ。

いつも通りの日常だが、今は本当に普通の私を実感してしまう。
お姉ちゃんじゃないといけない理由を思い知らされている気がして、憂鬱さが増していく。

「おい、持田どうした?」

ぼんやりとしたまま自分の席に座っていた私は、隣から聞こえた先輩の声に我に返った。

「すみません。ついあったかくてボーっとしちゃいました」
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