身代わり婚~偽装お見合いなのに御曹司に盲愛されています~
その答えに、声をあげて大村さんは笑うと、私の方へと歩いてくる。
「俺をなんだと思ってる?」
ぴたりと横にくると、私が卵を割るのをジッとみながら大村さんは聞いてくる。

「え?なんか別次元の人というか……」

「そんなわけないだろ?」
素直に言った私に、大村さんはため息交じりに言った。
でも、本当の私では会うことなどない人だろう。
そのことを思い、ザラリと心がざわつく気がした。

「どうした?」
そんな私の表情に気づかれてしまい、私はあえて明るく笑顔を作る。
「何がですか? さあ食べましょう」
「……ああ」
何かを言いたそうな感じだったが、大村さんは特に何も言うことなく席に着く。

「昨日といい、本当にうまい。いい嫁になるな」
サラリと言ったその言葉に、チクリと棘がささる。

その日は一日雪が静かに降りしきっていた。外はとても寒いだろうが、ここはとても心地が良かった。

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