見ツケテ…
なにがどうなっているのかわからないが、これじゃネックレスが外れなくても当然だった。


「なにか、道具を使えばとれるかも」


美奈の言葉に、館下先生は左右に首を振った。


「一通りのことは試してみた。それでもダメだったんだ」


チェーンと首の間にすき間はなかった。


このまま絞められ続けたらどうなるか……。


考えただけで、背筋が寒くなった。


「館下先生、その指輪になにか覚えがあるんじゃないんですか?」


知樹の質問に、館下先生は黙り込んでしまった。


答えられないということは、肯定しているのと同じ意味だ。


館下先生は、池の中にいた人物のことを知っているということだ。


5人の間に重たい沈黙が下りて来た時だった。


不意に、どこからともなく、まるで風に乗ってやってきたようにあの声が聞こえ始めたのだ。


アアアアアアアアア!!


サイレンのような、赤ん坊の泣き声。


その声は他の生徒たちには聞こえていないようで、みんななんでもない顔でウォーミングアップを始めている。
< 106 / 210 >

この作品をシェア

pagetop