見ツケテ…
だけど、水道に近づくことが怖かった。


あたしの心臓はさっきから早鐘を打っているのだ。


蛾口からは次から次へと緑の水が流れ、それに時々黒いものがまざる。


気が付けば排水溝は完全に詰まっていて、洗面台に水が溜まってきているようだ。


右手を伸ばしたまま洗面台へと近づいた時、ゴボッと音がして緑の水が床に溢れだしてしまった。


「どうしよう。あふれちゃった!」


「もう、お店の人を呼ぶ?」


美奈の言葉にあたしは何度も頷く。


そうした方がよさそうだ。


そう思った時だった。


ズルリと、水と一緒に流れ出ていた黒いものがあふれ出し、足元に落下した。


それは、真っ黒で長い髪の毛だったのだ。


「イヤアアア!!」


その悲鳴を上げたのはあたしと美奈、2人同時にだった。

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