見ツケテ…
美奈の言葉を一蹴してしまう直弘。


そうかもしれないけれど、きっと違う。


言い知れぬ不安が胸を支配していた。


「あれ、でもあの人普通にトイレから出てきてないか?」


知樹の声に視線を向けると、2人組の女性がトイレから出てきたところだった。


その2人に変わった様子はない。


あれだけ水浸しになっていれば、なにか反応が合ってもよさそうなのに……。


「あたしたち、水道の水をだしっぱなしにして出て来たよね?」


あたしは確認するように美奈へ聞いた。


「うん。足元まであふれ出してたはずだよね」


そう答える美奈と、視線を見交わせた。


「もう1度、確認してみる?」


「……うん」


美奈の言葉にあたしは頷いた。


本当はもうトイレに行きたくなかったけれど、このまま帰るのは余計に怖かった。


男子2人にトイレの前で待ってもらって、あたしと美奈は恐る恐るトイレの中に入って行った。


そして手洗い場を確認してみると、もう水は止まっていて、床にこぼれた緑色の水も、髪の毛も、跡形もなく消えていたのだった。
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