つくりもの
「きのちゃん、資料かけた?どーするこれー?」
授業終わりの友だちの気怠けな声に振り向く。教授が言ってたことを今更復唱しながら見る資料は面倒そうで顔を見合わせ苦笑した。
「ネットで検索してぼちぼち書こう」スマホを触りながらそうね、という声を聞きながら帰る支度をする。
あ、そうだ、二人とも次も授業あるから帰るの私だけか、と思いながら次も授業だよねー、と残念そうに話しかけた。このやりとりももう何回目だろうか。次の授業の話をする二人を見ながら何度も味わう小さな疎外感を少し唇を尖らせて表すと「きのちゃん、今日このあと何するの?サークル」これまたお決まりの台詞をきいて笑った。今日は違うよ、と1分も話さないうちにお別れだ。それもいつものこと。
バイバイ、また明日ね、授業がんばれ。手を振りながら二人に背を向けた。一人は好きだけど一緒に帰りたい気持ちはスマホを触ることで少し解決することは知ってる。
スマホに幾多あるショートカットの一番最後にあるアプリを開いた。
「今からスタバ行こうとしてるの、あそこのタワーの前ね、今ホールにいるから早く来て」パタパタと後ろからの声が聞こえ画面を暗くした。女の子がいなくなるのを確認してもう一度開いて今日の予定を確認する。
溜息をつきたい気持ちをぐっと堪えた。面倒臭い、今日何回目かの言葉を無意識に考えた。