愛され秘書の結婚事情

「じょっ、常務……!?」

 七緒の声も耳に入らない様子で、悠臣は「良かった。無事だったんだな……!」と声を震わせた。

「君が事故に遭ったと聞いて、飛んで来たんだ。怪我はないのか? どこか痛めたとか?」

 腕の力を少し緩め、悠臣は七緒の頬に触れながら訊ねた。

 七緒は顔を真っ赤に染めて、「け、怪我は、ありません……」とどうにかそれだけ答えた。

「それより、あの、常務……。ここはあの、会社ですので……」

「ああ」

 七緒の指摘で、悠臣は渋々彼女から離れた。

 それでもまだ疑いの目をして、「本当に、どこも怪我していないのか?」と言った。
< 109 / 299 >

この作品をシェア

pagetop