愛され秘書の結婚事情
「じょっ、常務……!?」
七緒の声も耳に入らない様子で、悠臣は「良かった。無事だったんだな……!」と声を震わせた。
「君が事故に遭ったと聞いて、飛んで来たんだ。怪我はないのか? どこか痛めたとか?」
腕の力を少し緩め、悠臣は七緒の頬に触れながら訊ねた。
七緒は顔を真っ赤に染めて、「け、怪我は、ありません……」とどうにかそれだけ答えた。
「それより、あの、常務……。ここはあの、会社ですので……」
「ああ」
七緒の指摘で、悠臣は渋々彼女から離れた。
それでもまだ疑いの目をして、「本当に、どこも怪我していないのか?」と言った。