愛され秘書の結婚事情

 驚きで言葉の出ない彼女を見つめ、悠臣は机に両肘を突き、組んだ手の上に軽く顎を乗せた。

 私的な会話を始める時の、彼の癖だった。

「去年も一昨年も有給をあげたけど、後で話を聞いたら、自宅で洗濯や掃除をしましたって返事だったでしょう。だから今年は、ディナーをご馳走して何かプレゼントを贈りたいなって思ったんだ。……迷惑かな?」

「いえ、迷惑では……。ですがその、せっかく予定のない金曜日ですし、もっと他の有意義なことに使われた方が……」

「これが僕にとっての、有意義な過ごし方になるって言ったら?」

「そ……」

 絶句した七緒を、悠臣は柔らかな眼差しで見つめた。

 普段は皺の目立たない彼の、弧を描いて細めた目元に、ほんのわずかに笑い皺が出来る。

 七緒は彼のこの笑い皺が好きだった。
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