愛され秘書の結婚事情

「……わかったよ」

 どこか不貞腐れた少年のような態度で、彼は改めて「もしもし」と通話相手の小森に話しかけた。

「さっきの発言は取り消す。今日は一日、君が僕をフォローしてくれないか。それが無理なら別の誰でもいい。とにかく佐々田さんは早退させるから。……うん。ああ、それでいい」

 室長との短いやり取りを終え、悠臣は電話を切って七緒を見た。

「……これでいいかい」

「…………」

 七緒は無言だった。

 紅潮した頬で目に涙を溜め、彼女はコクリと頷いた。
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