愛され秘書の結婚事情
「え、待って。ちょっと待って。信じられない。ちょっと、本当に待って」
「はい、お待ちします」
笑いを含んだ彼女の声に、悠臣の胸の鼓動がいきなりその速度を増す。
「え、え。本当に? 嘘じゃないよね? 今日ってエイプリルフール? 違うよね? え、本当に? 僕をかついでいるわけじゃなくて、本当の本当に、オーケーなの?」
「はい。オーケーです……」
「ちょちょちょ、ホント、待って! あ、今から行くよ! いいね? 行ってもいいね!?」
声を上げながらすでに、悠臣の足は自宅と真逆の方向に向いていた。
大通りに走り、そこで客待ちをしているタクシーに適当に乗り込む。
口早に七緒の住所をドライバーに告げ、「もしもし、今タクシーに乗ったから!」と彼女に言う。
「三〇分くらいで着くから! 寝ないで待っててくれる? ていうか待ってて!」