愛され秘書の結婚事情
一瞬唇が離れ、悠臣はそんな彼女の顔を見つめた。
うっすらと目を開けて彼を見つめ返す七緒は、これまで見たどんな彼女より甘い色香を放ち、彼はすぐに二度目のキスをした。
今度のキスはさっきより深く、悠臣は自然と立ち上がり、キスをしたまま彼女の側に体を移動させた。
自然と七緒も立ち上がり、二人は体を密着させたまま、長いキスを続けた。
風呂上がりの彼女からは石鹸とフローラル系のシャンプーが香り、しっとりした肌は手の平に吸い付くようだった。
急に男の本能が目覚め、悠臣は出来ればこのまま、彼女を押し倒してその全てを手に入れたいと思った。すでに彼は、そうするだけの権利を得ていた。
だが残念なことに、彼はその思いを遂げるための情熱を持ちながらも、暴走する思いを引き止める理性も同時に持っていた。
(この家には絶対、アレはないよな……)
甘いキスを繰り返しながら、彼の頭は冷静に現状を見ていた。
避妊具がない状況で後先考えず彼女を抱いて、万一妊娠などという事態になれば、またそれは彼女を悩ませ苦しませるだろう。
その可能性と危険が安易に想像できるから、悠臣は高まる欲求をぐっと堪え、どうにかキスまでで自分を納得させることにした。
そう、振られるつもりでいた朝の自分を思えば、今のこれは奇跡のような状況なのだ。