愛され秘書の結婚事情
そこで七緒はつい、「ですが」と口調を緩めて言った。
「常務にそこまで評価していただいて心苦しいのですが、わたくし近々、会社を辞めることになるかもしれません」
「え!」
七緒の告白に、悠臣はこちらが驚くほど反応した。
彼は椅子から立ち上がり、机に両手を突いて叫んだ。
「辞めるってどうして! 一体どういう理由で!」
「え……。あの、常務……」
戸惑う七緒を見て、悠臣はハッとしてさっきの彼女と同じ仕草をした。
右手で口元を覆い、悠臣は七緒から視線を逸して何もない壁を見つめた。
「……ごめん。あまりに驚きすぎて……年甲斐もなく興奮してしまった」
「いえ。こちらこそ、急な話で申し訳ありません」