愛され秘書の結婚事情

 顔を離し、悠臣は「好きだよ」と囁くように言った。

 七緒はぽぉとしながら、「私も……お慕いしています」と言った。

「それはあなたの周りにいる男の中で、僕を一番好きだってこと?」

「一番とか二番とか、そんな順位はつけられません。桐矢さんは唯一の存在です。私が今、唯一お慕いしている方です」

 七緒の答えに、悠臣はまた嬉しそうに笑った。

「やばいな。まさかこの年になって、こんな気持ちになるなんて思わなかった」

「どんな気持ちですか」

「街中をスキップしながら、僕は世界一幸せだーって叫んで回りたい気分」

 七緒はまたプッと噴いて、「それは……常務と我が社のイメージダウンになりますから、おやめ下さい」と言った。

「わかってるよ、秘書さん」
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