愛され秘書の結婚事情
そこで悠臣は名残惜しい気持ちで、また彼女の頬に触れた。
「ああ、くそ。どうして僕は明日から出張なんだ。三日も君と会えないなんて悪夢だよ」
「仕方ありません。ですがお帰りになったら、うちで夕食を召し上がって下さい。お帰りのフライトは、金曜の十九時二十分着のご予定ですよね」
「うん、君がそう言うならそうだろうね」
適当な返事をして、悠臣はまたそこでパッと表情を変えた。
「じゃあ七緒さん。僕が帰国する日は、僕のうちで待っていてよ」
「えっ?」
「ていうか僕が台湾出張している間に、うちに引っ越して来て。合鍵は明日渡すから、荷物は業者に頼んで必要なものを運んでもらって。クローゼットのスペースも充分あるから、服や鞄は全部持って来て大丈夫だよ。台所も勝手に使っていいし、ファブリック類が気に入らなければこのカードで好きなのに変えて」
そこで悠臣は財布を取り出し、いきなり金色のカードを彼女に差し出した。
「カードの暗証番号は1512だから。これね、僕がアメフト部にいたころの背番号を組み合わせた数字なんだ」