愛され秘書の結婚事情

「さて」

 ドリンクを注文したところで、晶代は改めて七緒に向き直った。

 まだ起きて間がないのか、髪はゆるく後ろで束ねただけで、きちんとセットされていない。白いシルクのパジャマの上に、厚手のガウンを羽織った格好の彼女は、とうに六十を越えているはずだが、その肌は健康的に輝いてとても若々しく見えた。

 くつろいだ格好のまま、晶代は息子の恋人を見つめた。

「昨日、悠臣から電話があって、あなたを連れて来るって聞いた時は驚いたわ。息子のプロポーズを受けたそうね」

「は、はい……」

「来た」と七緒は思った。

 次にきっと、二人の交際を反対する、という言葉が飛び出すだろうと身構えた七緒だったが、晶代の口から飛び出したのは、予想を越える台詞だった。

「私としては、二人の結婚には大賛成よ」

「え!?」

 仰天して顔を上げた七緒を、悠臣が頬杖を突いて笑顔で見つめる。

「ほら、だから言ったろう? この人は僕達の交際に反対したりしないよ」

「なんで私が反対するのよ」
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