愛され秘書の結婚事情
晶代は一瞬だけ息子の方を見て、またすぐに七緒に視線を戻した。
「あなたのことはね、悠臣の秘書になった当時から、息子に散々話を聞かされていたから、どういう人かは理解しているつもりよ。兄や小森室長からの評価も高いし、秘書としてとても有能で、賢くて謙虚で思いやりがあって、素晴らしい女性だと聞いているわ」
「そんな……恐れ多いことです」
七緒が膝に手を置いたまま恐縮すると、晶代は息子と同じ笑い方をして、「やだ、ホントに可愛い」と呟いた。
隣で悠臣が、「だろう?」と自慢げな顔をする。
「でも、問題は相手よね」
小さく嘆息し、晶代は冒頭の台詞を口にした。
「七緒さん。あなた本当に、この愚息と婚約しちゃっていいの? 後悔しない?」
「え!」
再び仰天した七緒に向かって、晶代は溜め息混じりに「だってねぇ……」とボヤいた。
「この子もほら、すっかりオジサンだし。バツイチだし。の割にまだまだガキっぽいし、頼りないし。おまけに元アル中でヤク中よ? いくら小金持ってるからって、かなりの不良債権よ? そんな男と婚約するなんて、あなたナイチンゲールの生まれ変わりか何かなの?」