愛され秘書の結婚事情
悠臣はぐっと詰まり、「確かに……」と低い声で言った。
「あなたはとても強いし、人としての器も大きい。だけど父さんが残した保険金と兄からの仕送りで、毎日ただ怠惰に過ごしてばかりじゃないか。僕は毎日会社に行き、真面目に一生懸命働いている。あなたにそこまで見下されるいわれはない」
「あらぁ、失礼ねー。私だって色々してるのよぉ。海の家を運営している地元企業を支援したり、サーファーを呼ぶためのイベントのスポンサーになったり、これでも結構忙しい身なのよー」
「それはあなたが単に海好きで、サーフィンが趣味だからでしょう」
「まぁそうだけどさ。何もしてないってことはないわよ」
「したくないことには、指一本動かさないくせに」
「そうよ、それが私の信条だもの。だからあんたの前の結婚式は欠席したけど、七緒さんとの式には出るわよ? それなら文句ないでしょ」
「ええ、ないです」
言い分は平行線のまま、なんとなく決着した形となり、悠臣はようやく上げた腰を下ろした。