愛され秘書の結婚事情
出店のための交渉は順調に進み、来年には台北市に三つの新店舗をオープンさせることが決まった。
その出店先の一つ、老舗の大手ショッピングモールで、悠臣は七緒への土産を選んだ。自由時間は全て、このためだけに使った。
台湾出身のデザイナーによる高級ブランドの、バッグにドレス、アクセサリーに時計。
有名陶器ブランドのオシャレな茶器に、台湾産の茶葉のセット。
台湾土産で有名なパイナップルケーキに、お菓子を幾つか。
さらに石鹸やフェイスパックなど、普段の彼なら立ち止まりもしなかった店に行き、店員の説明を熱心に聞きながら、彼女が喜びそうなアメニティグッズを大量に買った。
いつも荷物少ない悠臣らしからぬ土産の量に、帰りの飛行機ではまた小森秘書から訝しげな視線を向けられた。
だが今の悠臣にとって、他人の視線など何の意味も持たない。
七緒が渋るゆえに婚約の発表はまだ先に延ばしているが、母親には紹介出来たし、近々伯父の隆盛にも、彼女と結婚する意志を伝えるつもりだった。
今日が誕生日の彼女のために、マンションのコンシェルジュに有名洋菓子店のデコレーションケーキを頼んでおいた。
このお土産とケーキを持って帰宅し、ささやかな二人だけのお祝いをするつもりでいた。