愛され秘書の結婚事情
マンションに到着した彼は、大荷物を運ぶためにコンシェルジュの一人にカートを使って手伝ってもらい、自室である2008号室に向かった。
自分のカードキーで鍵を開け、玄関口の廊下に旅行鞄と土産を置き、ケーキの入った箱を受け取り、ここまで付き添ってくれたスタッフに「どうもありがとう」と笑顔で礼を言う。
悠臣のマンションは3LDKの間取りで、単身者が住むにはかなりの広さだった。
玄関も車椅子で入れるほどの余裕があり、三和土スペースも廊下も幅広で流行りの段差がないスタイルだ。
室内は落ち着いたネイビーカラーのファブリックで統一され、長い廊下の先、右手にバスルームやトイレといった水回りの部屋と収納スペースが並び、左手にある二十畳のリビングに面した対面式キッチンは広く使い勝手も良い。
リビングの隣に二つのドアがあり、リビング同様にベランダに面した十五畳の洋室を寝室に、もう一つキッチン横の部屋を書斎にしていた。
寝室にはダブルサイズのベッドが一つあり、三畳ほどのウォークインクローゼットが備え付けてある。
会社から近くコンシェルジュがいる、という理由だけで選んだ物件だが、七緒と同居することを考えると、このくらいのスペースがあって丁度良かったな、と悠臣は思った。