愛され秘書の結婚事情
アメリカでの失敗で、悠臣は自分という人間の器を悟った。
多少外見が優れていようと、多少語学が得意でビジネスの才能があろうと、多少運動能力が高く恵まれた体を持って生まれても。
人の本質を決めるのは、そんな表面的なものではない。
真理を見極め、人生で大事なものが何かを知っていて、それを手に入れるために努力を続けられる、何かを成し遂げるまで歩む足を止めない、そういう人間が真の実力者であり、賞賛されるべき存在なのだ。
そして自身は、何一つその資質を備えていない。そう思っている。
だからこそ七緒に惹かれた。
一緒に仕事をしながら隣で見ていて、彼女には迷いがないといつも感じていた。
七緒自身は「自分は迷いだらけだ」と答えそうだが、月曜日の事故の時も、暴走しかけた悠臣を止めたのは彼女だ。
社会的責任を果たすこと。ルールを遵守し、他者の助けになる行動を取ること。それが彼女の芯となっている。それはけしてぶれることがない。