愛され秘書の結婚事情

 プロポーズを受けるか否かで悩んでいたが、一旦受けると決めると即座に実現に向けた目標を立て、あとはひたすらに努力を続ける。

 普通の女性なら、月曜日にプロポーズを受けて、火曜日に彼氏の母親に会ってくれと言われたら、まず拒むか難色を示すだろう。

 だが七緒は迷いつつも、結局彼の要望に応じた。

 彼女自身が、それを“必要なこと”と判断したからだ。

 今回の大変身もそうだ。

 悠臣と交際するために、彼女は自分が“必要だ”と思ったことを、実行に移したにすぎない。

 そこには葛藤も迷いもない。

 彼女のその強さと真っ直ぐな心が、悠臣は眩しくて仕方がなかった。

 正直今の彼は、これからどうすべきかわからなかった。

 このまま同居を始め、婚約を継続し、結婚というゴールに向かって進むべきなのかどうか。

 彼にとって彼女との結婚は幸運でしかないが、果たして七緒にとって、悠臣との結婚が人生のプラスとなり得るのか。

 そうありたいと思うし、そうなるべく努力はしたいが、如何せん、今の彼は自信喪失の状態だった。
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