愛され秘書の結婚事情
一週間前、悠臣にプロポーズされた直後の七緒が感じた葛藤を、今は彼の方が感じていた。
自分が卑怯者という自覚もあった。
本当は彼は、ずっと前から知っていた。
七緒が少し手を加えれば、ぐっと女らしく魅力的になることを。
だが彼は一週間前のディナーの日まで、彼女にそれをさせなかった。
それを許せばきっと、他の男達までが彼女の素晴らしさを知るとわかっていたから。
そして今日、いや正確には昨日から、彼の虞れは現実となった。
これから毎週末、七緒は多くのデートの誘いを受けるだろう。
その中にはきっと、外見内面共に魅力的な男もいるだろう。
十も年の離れた自分より、年が近くて話も合って、彼女を心身ともに満たせるような、そういう男が。
「……どうすればいいんだ」
まさしく、一週間前に七緒が呟いたのと同じ言葉を、今、悠臣が口にした。
彼女とずっと一緒にいたい。その全てを自分だけのものにしたい。
だがそうすることは、ひどく罪深いことのように思える。
婚約者の肩書を振りかざし、彼女に近付く男を全て排除して、果たしてそれは“正義”と呼べる行為なのか。
それが悠臣にはわからなかった。
だがその答えは、彼でなく彼女の中に存在した。