愛され秘書の結婚事情
5.
ロウソクに炎が灯り、チラチラと柔らかな光が揺れる。
七緒は悠臣とテーブルに向き合って座り、その美しい明かりにじっと見入った。
「さぁ、一息に吹き消して。あ、消す前にお願いごとをするのを忘れないで」
悠臣に促され、七緒は笑顔で頷いた。
数秒目を閉じ、次に目を開けた瞬間、彼女は一息にロウソクの火を吹き消した。
「お誕生日、おめでとう」
悠臣に笑顔で拍手され、七緒は笑顔で「ありがとうございます」とお礼を言った。
そして彼女が立ち上がってケーキを切り分けようとすると、悠臣は自分も立ち上がり、「僕がやるよ」とその手からケーキナイフを奪った。
意外に慣れた手付きでケーキをカットし、互いの皿にケーキを切り分けたところで、彼はワインクーラーから持ってきたシャンパンの瓶を手に取った。
黄金色に輝き、見た目も美しいそのボトルを見て、七緒は驚いた。
「桐矢さん。それはもしかして、ルイ・ロデレールのクリスタルでは……」
「正解。さすが僕の自慢の秘書さんだ。ワインの銘柄にも詳しいね」
悠臣は軽くウィンクして、「わざわざワイン講座なんて受ける必要ないんじゃないかな」とおどけた口調で言った。