愛され秘書の結婚事情
「あの懇親会に、常務はいらっしゃらなかったはずなのに……」
真っ赤になって恥ずかしがる七緒を見て、悠臣はクスクス笑った。
「僕の情報収集力を舐めちゃいけないよ。専属秘書は君だけど、他にも社内の噂を耳に入れてくれる人間はいるんだよ」
「信じられない……!」
七緒はグラスをテーブルに置いて、真っ赤な顔を両手で覆った。
「どうして。上司に苛められていた、気の毒な新入社員君を救ってあげたんだろう。ちなみにその後ね、部下に飲酒を強要した上司は、問答無用で降格処分を受けるルールが出来たでしょう。あれ、提案者は僕だからね」
「えっ!」
また驚きに顔を上げ、七緒は悠臣の顔を見つめた。
「そうだったんですか。あのルールが出来て、沢山の社員が喜んでいましたよ。飲み会への参加強制も禁止されましたよね」
「うん。僕もアルコールは嫌いだからね。それを武器にするような人間は大嫌いなんだ」